すや亀「おいしさ」へのこだわり~木桶の再生 166号 2018.06

すや亀本店 修理に出した木桶
 今年も大きな「みそ仕込桶」の修理を大阪府堺市のウッドワークさんに依頼し、大型連休の直前にできあがって来ました。これで6年かけて行ってきた木製の仕込桶の新調(2本)、改修(6本)がすべて終了したことになります。

 日本古来の桶は、上部が広くて下が狭く、竹タガで絞める構造になっており、製造・修理には専門の職人さんの腕が欠かせません。かつてはどんな小さな町にも必ず桶職人さんがいたものですが、戦後、ガラスやプラスチックの容器に押され、桶屋さんは激減しました。みそ仕込桶のような大型の木桶を製造・修理できるのは、私の知る限りウッドワークさんだけです。

 今回修理を依頼したのは、大正年間製と推測する20石桶(直径2m、高さ1・8m)。一旦解体して側面の板や底板を削り直し、竹タガを新調しました。板一枚ごとのテーパー(先細り形状)の細密さ、竹を編んでタガを作り、桶を締め上げていくむずかしさなど、腕の立つ職人さんが不可欠です。再生した桶は子や孫の代まで使えそうですが、次回の改修時に、ウッドワークさんの技術も子孫の世代に継承されていることを願うばかりです。

 さて、おいしいみそをつくるには良い原料を使うことが一番大切ですが、【醸(ルビ=かも)しの技(ルビ=わざ)】と共に、【熟成させる容器】も大事なポイントです。木桶にすみ着いた「蔵付き酵母」が微妙な味と香りを醸し出すのです。6年間の木桶新調・改修にかかった費用は、軽く高級車が買えるほど。お金がかかる割にその成果は大きくないかもしれませんが、店主である私のみそ屋としての矜持であり、こだわりなのです。

すや亀本店 修理されて戻ってきた木桶

 ところで「樽(ルビ=たる)」と「桶(ルビ=おけ)」の違いをご存知ですか。酒やしょうゆ等液体を入れる、上面にフタ(カガミとも)がついたのが樽、それがないのが桶です。
2018.06 信州香味だより166号より

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