おむすび梅と甘露梅~170号 2019.06

夏に人気の梅製品には、丸のままの「梅漬け」、種を抜き刻んで食べやすくした「おむすび梅」、ハチミツで甘く食べやすくした「甘露梅」の3種類があります。

梅漬けを始めたのは昭和55年頃、長野市松代地区の豊後梅を母の漬け方で漬け込んで製品化しました。通販の商品にしたものの梅の産地である和歌山や群馬のような梅産地でないため、なかなか売れません。在庫を抱えて困っていたところ、ある方から「種を抜き細かに刻めば食べやすい」とアドバイスいただき早速試してみました。それがお客様に評判で、誕生したのが「おむすび梅」です。

群馬の梅園の梅木 すや亀

翌年からはさらに漬け込み量を増やしましたが、もともと生産量の少ない長野では十分な梅を確保する事が困難で、市場の紹介で群馬県榛名町(現在は高崎市)の梅を使うことになりました。和歌山に次ぐ大産地だけあり、集荷施設も立派でした。集荷翌朝に届けてもらう梅は、軟化を防ぐため一晩冷水に浸漬し冷蔵庫で保管。翌々日から塩漬けを開始します。一度に塩分を上げるとシワがよるので5回から6回に分け塩分を上げていきます。大きな地下タンクがないので、500Lのタンクを何十本も使い、毎日のように重石をのせたり外したり。シーズンが終わると担当者はげっそり痩せているというほどの重労働でした。それでも平成15年に生協さんで採用されヒット商品となりました。
初めの予測が2千個のところ1万個を超える注文が入り、社員総出で一週間、毎晩遅くまで残業して間に合わせたこともありました。 甘露梅は「甘い梅が欲しい」とのお客様のご要望で、蜂蜜を使う工夫をし製品化しました。当初はそれほどでもありませんでしたが、現在では一番の人気商品となっております。

梅の栽培はなかなか無農薬とはいきませんが、薬剤散布の回数を極力抑え、梅が軟化しないよう貝カルシウムを使い、冷蔵庫で保管します。また着色料は一切使用せずシソの葉のみです。そのため着色料使用に比べ退色が早いのはご容赦いただきたいところです。

すや亀で使う梅

以前は梅の漬け込みが終わる頃、市場からシソの葉を大量に仕入れ、授産施設さんの協力を得ながら、枝から手で葉をもいでシソ揉みをしましたが、10年ほど前、静岡でシソ葉を専門に扱っている業者が見つかり、現在はそちらに委託しております。
どうやって葉もぎをやっているのかと思ったら、お茶の刈り取り機を改良して使っているそうです。やはり産地には産地の知恵があるのですね。
ところが今年の大型連休中、群馬では雹害を受け、多くの梅が傷つきました。5月中旬時点では損害の大きさはまだわかりませんが、無傷の梅の相場は大幅に上がりそうです。
なんとか初秋に無事出荷できることを祈るのみです。

2019.06 信州香味だより170号より

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